
【概要】
・8作目配信限定シングルとして2020年9月16日発売。
(「here comes my love」以来約2年8か月ぶり)
・20枚目のアルバム「SOUNDTRACKS」3曲目に収録。
・TBS系火曜ドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」主題歌。
(TBS系ドラマ主題歌担当は2004年日曜劇場『オレンジデイズ』の「Sign」以来約16年ぶり)

turn over?のここがスゴイ!!
①ラブロマンス映画サントラの様!古くて新しいポップな曲調
②愚直な愛?歪んだ愛?心境で変わる愛の歌詞
③歌詞の捉え方で意味が変容するタイトル
①ラブロマンス映画サントラの様!古くて新しいポップな曲調
雑誌のインタビューでギターの田原さんが「桜井のエルヴィス・コステロ像が出てる」とお話しされていたとおり、全体の曲調はMr.Children初期に多く見られたコステロ調の明るいポップサウンドです。
「KIND OF LOVE」や「Versus」に収録されていても違和感なく聴けてしまう爽やかさ。
しかし、そこで終わらないところがこの曲。
初期の初々しさ・瑞々しさ・透明感はメロディーラインで残しつつ、田原さんの包容力満載な間奏ギターソロや2番Aメロが特に印象的なナカケーのエロいベースライン、いつものエネルギッシュさ・ダイナミクスさをそ〜っと出しながらもしっかりとメロディを支える桜井さんのギターストロークとJENのリズム。
来年デビュー30周年を迎えるバンドの大人の余裕・重さをしっかりとそのメロディラインに乗せることで、この一曲の中に若気と大人気を同居させているのです!
そして前奏なしで始まるこの曲。
なんとMr.Children歴代シングル史上最短(3分25秒)の曲なのです!
現代音楽の特徴として、「短時間の楽曲」「短い前奏」が挙げられます。
Mr.Childrenの楽曲は5分程度の尺で前奏からしっかりと聴かせるものが多数でした。
それがこの曲では、前奏なし、尺も歴代最短ということで、現代音楽のトレンドをしっかりと取り入れています。
90年代初期のポップサウンドに現代の音楽トレンドを織り交ぜた新しいポップサウンドとなっているのです!
松岡茉優さん主演の大人なラブコメドラマの主題歌ですが、浜辺美波さん主演の初々しい青春恋愛ドラマの主題歌でも合ってしまう・・・
更に言えば、ジュリア・ロバーツ主演の海外ラブロマンス映画の主題歌でも全然行けちゃう気がします!
それもアメリカ・ロサンゼルスでの陽気なレコーディングスタジオや、Mr.Childrenの楽曲で珍しく取り入れられているパーカッションやハンドクラップが「海外っぽさ」を感じさせているからだと思います!
②愚直な愛?歪んだ愛?心境で変わる愛の歌詞
主人公「ボク」は最愛の「キミ」とすれ違いの日々を過ごしている。映画のようにうまくいくストーリーではないと諭す。
そうは言いながらも、「キミ」に対してこれでもかと愛の常套句を並べ、「キミ」に必要な存在になろうとする。
お調子者なのか、偏屈なのか、主人公の「ボク」はすれ違いの原因を自分とは思いたくないのでしょう・・・
1番では「キミ」に現実は違うと投げ掛けてるんですよね。
それが一転、2番では「悪いこと」が頭に浮かんでしまい、「キミ」に必要な理解者になろうと、よくある愛を表現する言葉を並べています。
「forever love」=永遠の愛
「I’ll make you smile」=キミを笑顔にし続ける
「ダーリン」=最愛の人
ここで気になるポイントが、「必要な理解者に今こそ『なろうと思います』」や「『叫びたいくらいだ』ダーリン」と実際に行動に移していないところなのです。
1番の偏屈ぶりがまだ抜けきれていないのでしょう。
しかも現実現実言っていたヤツがいきなりこんな言葉並べても「どこまでも濁っていて嘘八百」ですよね(笑)
それでも変わろうとする「ボク」が愛しく思えます。
と、現在進行形で彼氏彼女や旦那奥さんとうまくいっていない方はこの様な捉え方をすると思いますが、
この歌詞、「ボク」が浮気をしていると妄想すると、「キミ」に対して必死に取り繕っている様にも取れるんですよね〜!
そう捉えてしまったアナタ、イケナイことしていないですか・・・?
③歌詞の捉え方で意味が変容するタイトル
ポイント②でその人の心境によって捉え方が変わると説明しましたが、この曲のタイトルもそうなのです!
『turn over』
・回る
・転用する
・ひっくり返す
・(事が)大きく変わる
・惰性で進む
・ドキドキする
・あれこれと考える
・(同性愛者が)裏を見せる
なんと「turn over」にこれだけの意味があるんですね〜!
ビジネスの意味も含めると更にありました・・・
しかし面白いのは、これら全てこの曲の歌詞に当てはまるんです!
「回る」→歌詞にも「地球は回る」とありますが、「ボク」と「キミ」のすれ違いの日々が回る、妄想が頭の中を回る、愛の常套句を回す・・・と色々回ってる。
「転用する」→1番で「ボク」が「キミ」に対して映画での例えやよくある言い回しを転用している。また、愛の言葉を転用して並べている。
「ひっくり返す」→「ボク」の心情が1番から2番でひっくり返っている。「ボク」が「キミ」の気持ちをひっくり返そうとしている。
「(事が)大きく変わる」→「ボク」と「キミ」の関係性が大きく変わろうとしてる。
「惰性で進む」→1番は惰性で「キミ」のご機嫌取りをしている。Cメロから大サビにかけて、愛にはいろんなカタチがあり面倒臭いと開き直り、惰性で愛の言葉を投げている。
「ドキドキする」→「ボク」の心情
「あれこれと考える」→曲を通して「ボク」はあれこれ考えている。
「(同性愛者が)裏を見せる」→「キミ」が同性愛者で「ボク」が「キミ」を愛そうと変わろうとしている。
(キミに必要な理解者・いろんなカタチの愛・面倒臭くて手に負えない愛という名の不条理)
色々当てはめられますが、特に最後の意味は考察することが面白いですね〜。
Mr.Childrenの歌詞で「ぼく」と「きみ」がカタカナになっているのはこの曲のみで、無関係な「僕ら」を漢字、愛の「カタチ」をカタカナにあえてしているところからも、他のラブソングとは意味合いが異なることを表している様に捉えられます。
ブームを巻き起こした「おっさんずラブ」の主題歌もいけちゃいそうです・・・!
(スキマスイッチの主題歌「Revival」も大好きです!)
turn over?のポイントをおさらい!
①ラブロマンス映画サントラの様!古くて新しいポップな曲調
②愚直な愛?歪んだ愛?心境で変わる愛の歌詞
③歌詞の捉え方で意味が変容するタイトル
「仕事行きたくない」というどこまでも透き通っていて嘘はない気持ちを胸に、
明日からも仕事ガンバリマス!!
(ここからは私的歌詞解釈ですので、お暇な方はご覧ください・・・)
『明け方の東京はしらけた表情で
眠れないボクのことを見下ろしてる』
(【出典】turn over?/Mr.Children 作詞:桜井和寿)
東京という街は「冷たい・感情がない」と揶揄されることが多い。
その東京がしらけた表情で見下ろすということは、
ボクは何かマイナスなことをしでかしたのであろう。
そんな主人公は眠れない夜を過ごし明け方になってしまった。
(「君が好き」の『月も濁る「東京」の夜だ』のように、
ライブで「東京」を各会場の名前に変えて歌ってくれそうですよね〜!)
『こんなスタートで今日を迎えてしまうのは
「誰のせいなんだ!?」って言いたくもなる』
(【出典】turn over?/Mr.Children 作詞:桜井和寿)
「こんな」スタートで今日を迎えて「しまう」、
やはり一からの、いやマイナスからのスタートだった。
ボクは自分のせいではなく誰かのせい(または誰のせいにもしない)にすることで気持ちを落ち着けようとしている。
『キミは今どう思っているの?
すれ違いの日々を』
(【出典】turn over?/Mr.Children 作詞:桜井和寿)
「眠れない」「こんなスタート」の理由はキミとの問題によるもの。
ボクとキミはうまくいっておらず、すれ違いの日々を過ごしている。
『映画じゃ 躓いても立ち直っていくってストーリー
散々観たろう?だけど現実は違う
誰かしら泣いてんだよ 栄光と美談の裏で
だからさ よく考えてみて
機嫌直してよ』
(【出典】turn over?/Mr.Children 作詞:桜井和寿)
映画ではそんな男女のすれ違いの日々が続いても、最終的にはハッピーエンドを迎える・・・
ただしそれはあくまで映画の話で、現実はそうはいかない。
そんなハッピーエンドの裏では違う誰かが涙を見る。
ボクは現実をキミに突きつけ、改めて考え直してもらうようお願いしている。
(1番はマイナスなワードが並べられます・・・)
『頭の中 妄想が渦を巻いている
悪いことばかりを考えてしまう』
(【出典】turn over?/Mr.Children 作詞:桜井和寿)
頭の中でボクは、キミとの関係が悪くなる、拗れる、破綻してしまうことを妄想し続けてしまう。
『キミに必要な理解者
今こそなろうと思います』
(【出典】turn over?/Mr.Children 作詞:桜井和寿)
その悪い妄想を断ち切るため、キミに必要な人になろうと決心する。
(ポイントでも述べましたが、「なろう思います」とまだ思っているだけなところが可愛いですよね笑
どこか「運命」の主人公とも重ねてしまいます。)
『子供らの聖歌隊 その歌声のように
どこまでも透き通っていて嘘はない
forever love
I’ll make you smile
叫びたいくらいだダーリン
我が人生で最愛の人は
そう キミ一人』
(【出典】turn over?/Mr.Children 作詞:桜井和寿)
ボクの気持ちに濁りも嘘もないことを聖歌隊の子供達の歌声に例え、
結婚式で誓うようなセリフを続け様に並べる。
最愛の人はキミだとボクは自覚する。
(ここでも「叫びたいくらいだ」と、実際には叫んでいないんです笑)
『地球は回る 僕らとは無関係で
それもそうさ いろんなカタチの愛があって
今日も生まれては消えてく』
(【出典】turn over?/Mr.Children 作詞:桜井和寿)
地球上では今日一日でたくさんのカタチの愛が生まれては消えている。
当事者となれば眠れなくなったり、最悪なスタートを迎えたりするのだろうが、
そんなことはお構いなしに地球は回り時が過ぎていく。
(終わりなき旅や足音の2番にも通ずるところがありますね〜。
ここで「僕ら」を「ボクら」としなかった理由を勝手に妄想すると、
この曲の「ボク」と「キミ」のストーリーを第三者として聴いている「僕ら」、つまりリスナーとしているように考えられます。そして「カタチ」をカタカナにすることで、「僕ら」=リスナーが「ボク」と「キミ」の愛のカタチに没入させられます。)
『面倒臭くて手に負えないな
この愛という名の不条理
懲り懲りだって思うけど キミ無しじゃ辛い
forever love
I’ll make you smile
叫びたいくらいだダーリン
この人生で最大の出会いと悟ったんだ』
(【出典】turn over?/Mr.Children 作詞:桜井和寿)
大サビのこの歌詞に辿り着くまで、愛に散々振り回されるボク。
それでもキミへの愛を叫びたいと願う。
(「ストーリー」から「不条理」の韻の踏み方が素敵です・・・
そして「懲り懲り」は『幸せのカテゴリー』以来の登場です。
いろんな愛のカタチがMr.Childrenの歌でフラッシュバックしますね〜!)
『我が人生で最愛の人は
そう キミ一人
ただ一人』
(【出典】turn over?/Mr.Children 作詞:桜井和寿)
最後に「最愛」を繰り返し「ただ一人」と加えることで、別の「キミ」ではなく特別な「キミ」であると強調。
それがボクにとって吉となったか、凶となったかはリスナーの妄想に委ねられる。
(「ただ一人」と最後に持ってきたことで、逆にこれまでは別の「キミ」がいたのか!とも考察できます。ボクは罪な奴ですね〜笑)
総評
星座の配置すらない、リスナーの想像力をこれでもかと掻き立てる変幻自在なラブソング